僕は忘れられたオルゴール
時々螺子が緩んで声をあげるけど
誰も聴いてない
誰も聴いてないよ
僕の音を聴いてくれるのは
向かいに住んでるマリオネット
本当は一緒に暮らしていたのさ
だけど隣の奴が連れていっちまった
窓際からそっと見上げると
彼女の姿が見えて
そこで彼女は柔らかな肢体をくねらせ
奴とキスをするのさ
奴とキスをするのさ
僕は忘れられたオルゴール
話しかけてくるのはピンクの蜘蛛だけで
君のその沢山ある手で
僕の螺子を巻いて欲しいって頼むんだけど
「だめだね僕じゃ 力不足さ」
そこでまた僕は溜息を付いて
何とか自力で這い上がろうと思うんだけど
タンスの隙間に落ちた身体は
どんどん埃が積もって来て身動きが取れない
僕は忘れられたオルゴール
こうやっていつの間にか錆び付いて
もう二度と鳴る事もなくなるから
だからさあ
開けた目を閉じて欲しいんだ
最後に一度だけ鳴るからね
「こんにちわ さようなら」
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